横山秀夫サスペンス「F県警捜査一課」に集うクセ者たち
1月23日放送のテレ東ドラマ『横山秀夫サスペンス「ペルソナの微笑」。
横山秀夫のF県警捜査一課シリーズです。ドラマでは、山梨県警という設定。捜査一課の3つの班が凶悪犯罪の犯人を検挙するシリーズですが、この各班の班長を演じる刑事たちは「ホシを上げる」ことに執念を燃やすクセ者揃いで、すっかりハマっています。
今回は仲村トオルさん演じる1班班長朽木警部がホシを上げる作品。ちなみに、今、このシリーズは、2班班長楠見警部を松重豊さんが、3班班長村瀬警部を岸谷五朗さんが演じています。
あらすじ
隣県でホームレスが青酸カリで殺害された。16年前に同じ青酸カリで金融業者が殺害された事件を未解決のまま抱える朽木警部は、その事件の捜査本部を除く。そこで目にした不審人物の似顔絵は16年前の事件で描かれた人物とそっくりだった。
朽木警部率いる捜査一課1班の若き八代刑事が事件の謎に挑む。16年前、犯人は被害者の子どもに青酸カリを渡し、言葉巧みに父親の酒に混入させた。子どもを使った卑劣な犯罪。八代刑事もまた、子どもの頃に犯罪に使われた経験を持つ。そんな彼は、どのように真実にたどりつくのか?そして、彼は、これから自分の過去とどう向き合って生きるのか?事件は徐々に違う顔を見せ始め…八代刑事は、上司の刑事としての背中に何を見るのか?
3人の老練な警部たちに振り回されながら、事件に喰らいつく新人刑事をジャニーズの風間俊介さんが演じます。過去の事件で「笑わない男」になり、無表情な朽木警部と、逆にいつも笑いを浮かべて明るく振る舞う八代刑事。更に、楠見警部や村瀬警部も絡む展開で、2時間はあっという間です。
殺人事件を扱う刑事ドラマでありながら、子ども時代に同じような体験をした二人の人間の対照的な生き方であったり、八代刑事が上司に見た刑事の背中であったり、奥の深い人間ドラマに仕上がっています!
キャスト
山梨県警捜査一課1班班長朽木泰正警部>仲村トオル
山梨県警捜査一課2班班長楠見昌平警部>松重豊
山梨県警捜査一課3班班長村瀬恭一警部>岸谷五朗
山梨県警捜査一課1班八代勲刑事>風間俊介
山梨県警田畑昭信捜査一課長>平田満
神奈川県警安川係長>神尾佑
阿部勇樹(16年前の被害者の息子)>須賀健太
阿部光子(16年前の被害者の妻)>戸田菜穂
いつもながら、抑揚のない淡々とした台詞が似合う仲村トオルさん、凄みのある表情で迫る松重豊さん、サラリと流す感じながら含みを持たせる岸谷五郎さん、アプローチの仕方は対照的ながら、八代刑事の抱える葛藤に切り込んでいきます。風間俊介さんも、私の中では、俳優のイメージはあまりないのですが(沸騰ワードやZipのイメージが強いからかな?)、でも、ニヤついた表情と真剣な表情とのコントラストが印象的でした。
そして、最後の仲村トオルさんと松重豊さんとのやりとり。しばらく何度も見返してしまいそうです。
でもって、クセ者なのは警部たちだけではありません。
個人的に好きなのは神尾佑さん。強面で、以前はDV夫とか犯人役とかが多かった気がしますが、最近は刑事役での露出も多いです。シンゴジラでも外務官僚役でしたね。硬いイメージですが、Twitterをちょっと除くと、真面目➕結構お茶目でお酒好きな方のようです。でも、今回は出番少なめ…印象も薄め…
それと、最近ガンガン存在感上がり中の松嶋亮太さん。「相棒」で浅利陽介さん卒業後気になるキャストとして私の中に定着しつつあります。出てると、ちょっと嬉しい。今回は朽木班の一刑事役ですが、もうちょい個性ある役やってほしいなぁ。
横山秀夫さんのこの山梨県警捜査一課シリーズは、3人の個性豊かな警部を軸に、ドラマでは、その下の若い刑事たちや彼の上司である田畑捜査一課長も決して負けない存在感で物語を盛り上げます。緊張感漂う展開の中での捜査一課長の静かなナレーションもアクセントになっています。
こーいう脇役チェックも大好き!
この作品は横山秀夫原作の「第三の時効」に収められている短編です。他にも同シリーズの「モノクロームの反転」「密室の抜け穴」「囚人のジレンマ」「沈黙のアリバイ」そして、「第三の時効」が収められており、これらはいずれもドラマ化されています。
テレ東の仲村トオルさん、松重豊さん、岸谷五朗さんが出演するシリーズでは、「モノクロームの反転」「沈黙のアリバイ」「第三の時効」が映像化。それぞれに、警部たち自身が持つエピソードだったり、若手刑事の抱える葛藤だったり、人間の心模様が織り込まれています。
「モノクロームの反転」には福士誠治さんが出演。この人も結構いろんなドラマに出ていて、役柄もバラエティに富んでいます。ガッツリ主役をはるということは少ないようですが、な〜んか欠かせない役にキャスティングされている感じです。
「沈黙のアリバイ」には音尾琢真さんと忍成修吾さん。忍成修吾さんは二枚めなのに、犯人役多いんですよね。めっちゃアクが強いわけでもなく、アッサリした雰囲気の方で、もちろん刑事役だってできる方ですが、なぜか、犯人役が多い。何でですかねぇ?
音尾琢真さんは、その忍成修吾さんに利用される役。映画「祈りの幕が下りる時」や「検察側の罪人」などで少ない出番で悪役ぶりを印象付けました。見た目のインパクトも音尾さんの方がずっと強い。それなのに、彼にしてやられるというのが、不思議な気がしました。
このシリーズは他局でもドラマ化されていて、朽木警部役が渡辺謙さん、楠見警部役が段田安則さん、村瀬警部役が伊武雅刀さん、田畑捜査一課長役が橋爪功さんです。こちらの俳優たちもクセ者ばかりですね。作品もやはり見応えのあるひねりの効いた仕上がりになっています。脇を固める刑事役は、石橋凌さん、緒方直人さん、金子賢さんなど。事件関係者も個性派たちが顔をそろえており、こちらのシリーズでは、「密室の抜け穴」や「囚人のジレンマ」もドラマ化済みです。
それと、「第三の時効」に収集されていないF県警捜査一課シリーズで「永遠の時効」という作品もドラマ化されています。こちらでは、朽木警部役が田中哲司さん、楠見警部役が光石研さん、朽木警部と楠見警部の間で翻弄される田中刑事役が中村俊介さんです。田中刑事も過去に傷を持つ身で、事件を通して、最後には自分の人生に向き合おうとするラストになっています。
そして、何とこのドラマでは、他局で村瀬警部役を演じている伊武雅刀さんが、尾関刑事部長という役柄で出演。こういうの見ると楽しくなります。
横山秀夫さんの小説は「警察ドラマの金字塔」などと言われていますが、面白い作品はどこに行っても選ばれるのですね。
新作、見たいです。